人類が最初に工業生産した合成繊維
ナイロンの誕生
1935年、アメリカのW・H・カローザスによってナイロンが発明され、人類が最初に工業生産した合成繊維である。
元々はアメリカのデュポン社のポリアミド(Polyamide、PA)繊維の商品名であったが、現在では繊維を形作る性質をもった合成高分子ポリアミドの総称になっている。
ポリアミド(Polyamide、PA)は脂肪族、芳香族、脂環式ポリアミドに分類される。
いずれもアミド結合で連なった線状の高分子である。
1938年、ナイロンは世界最初の本格的合成繊維としてアメリカのデュポン社から発表された。
当時のキャッチフレーズが「鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い、石炭と空気と水から作る魔法の繊維」とあり、ナイロンの糸は生糸によく似た光沢を持ち、生糸よりも丈夫であった。
そのため、それまで生糸から加工されていた女性用靴下(ストッキング)にナイロンが用いられるようになり、第二次世界大戦前には生産高世界一であった日本の生糸の輸出は激減した。
2022年現在、ナイロンの誕生から約90年近く経つが、未だナイロンはポリエステル、アクリル繊維と共に合成繊維の主力を占めている。
名前の由来
ナイロンの販売当初、当時の高価な絹ストッキングが抱えていた大きな問題は、糸切れが原因となるいわゆる”伝線(run)”であった。
それに対してナイロンは丈夫で切れにくいのでデュポン社が「No-run」と名付けようとした所、他で商標登録がなされていたためNylonとした、という説が有力である。
6ナイロンと66ナイロン
線状高分子の脂肪族ポリアミドの数は数百以上にもなるが、現在の合成繊維として市場に流通しているものは主に2種類で、
一つはデュポン社が最初に発売した66ナイロン(ナイロン6,6とも言う)である。
66ナイロンとは、原料がアミド基で結合している脂肪族化合物2種類の構成分子(アジピン酸とヘキサメチレンジアミン)で、これを重合するとアジピン酸由来の炭素が6個、ヘキサメチレンジアミン由来の炭素が6個となる。
この事から66ナイロンと呼ばれている。
もう一つは6ナイロン(ナイロン6とも言う)であり、イプシロンカプロラクタムの炭素数が6個ある事に由来している。この6ナイロンはアメリカ以外の多くの国で流通しており、日本でも6ナイロンは多く作られている。
66ナイロン、6ナイロン両方とも溶融紡糸をして繊維とする。繊維としての諸性質はナイロン66とナイロン6は共によく似ているが、融点だけはナイロン66がおおよそ265℃、ナイロン6がおおよそ225℃と大きく異なっている。
産業用には融点の高さから66ナイロンが好まれる傾向にあるが、衣料用に関しては6ナイロン、または66ナイロンを使用するかは製造、使用してきた各国各地域の歴史や利便性などから決定される事が多い。
ナイロンの性能と用途
ナイロンは大きな特性として、強靭で、耐油性、耐薬品性、染色性に優れ、かなりの高温から低温に渡り安定して使用できる。ナイロンプラスチック(紡糸しないナイロン)はとくに摩擦係数が小さく、耐摩耗性にも優れているので、カム、ベアリングなど機械部品や建材部品、アパレル関連ではファスナーの材料として使われる事もある。
ナイロン繊維で挙げられる大きな特性として、引張強さ、高い耐摩耗性、適度な弾性、パーマネント加工が出来る事から編物、織物両方に用いられる。弾力があるため引っ張りに強くシワになりにくいために、キメの細かい薄い織物、とくに女性用靴下(ストッキング)に最も適しているとされている。